東京から新幹線で最短で約30分の小田原。その南の海沿いに、現代美術作家・杉本博司が手がけたアートの場「江之浦測候所」があります。海と空、そして夏至や冬至の太陽の光と向き合うために設計された建築群には、国内外から多くの人が訪れています。
その江之浦測候所とあわせて楽しみたいのが、ルフロ湯治とこだわりの美食を心ゆくまで体験できる宿「江之浦リトリート 凛門(りもん)」。
地元の海と畑の恵みを余すことなく使った日本料理を目当てに、泊まりに訪れる方も少なくありません。
この記事では、江之浦測候所の見どころと見学のしかた、そして江之浦測候所とあわせて楽しみたい江之浦リトリート 凛門の魅力を紹介します。
アートや建築が好きな方、食を目的に旅をしたい方、富士山や箱根をめぐる旅に静かな1泊を加えたい方は、ぜひ参考にしてください。
杉本博司と江之浦測候所の魅力|海と太陽の光を「測る」アートの場
現代美術作家 杉本博司とは
杉本博司は、1948年に東京・御徒町で生まれた現代美術作家です。1970年に渡米し、1974年からはニューヨークを拠点に活動。写真を出発点に、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理まで、表現の場を大きく広げてきました。
作品に一貫しているテーマは、「歴史と存在の一過性」です。時間とは何か、人はどのように世界を知覚するのか、意識はどこから生まれたのか。そうした問いを、西洋と東洋の考え方を橋渡しするような視点で探求しています。
代表作のひとつが、世界各地の水平線を撮り続けた写真シリーズ「海景(Seascapes)」です。江之浦測候所の夏至光遥拝100メートルギャラリーでも、このシリーズが展示されています。
国内外での評価も高く、ハッセルブラッド国際写真賞や高松宮殿下記念世界文化賞などを受賞し、2017年には文化功労者に選ばれています。
2008年には建築設計事務所「新素材研究所」、翌2009年には「公益財団法人小田原文化財団」を設立。小田原文化財団は、古典から現代までの演劇の継承や、古美術品の保存・公開、現代美術の振興を目的とし、その活動の拠点として2017年秋に開館したのが江之浦測候所です。
江之浦測候所の魅力
杉本博司は、「古代の人々が最初に行ったアートとは、天空の中で自分がどこにいるのかを確かめる作業だった」と考えました。
その原点に立ち返るために、季節の節目となる夏至・冬至・春分・秋分の太陽の動きを軸にして、この場所全体を設計しています。
もうひとつの特徴は、建築そのものが日本の建築史をたどる展示になっていることです。各時代の建築様式や伝統工法を再現し、根府川石や小松石など近くで採れる石材を使っています。
庭の景石には、近くの石切り場跡から出土した江戸城の石垣用の石も使われています。建物・庭・海・光がひとつになった風景を、ゆっくり歩きながら楽しめるのが江之浦測候所の魅力です。
夏至の朝日がまっすぐ差し込む「夏至光遥拝100メートルギャラリー」
江之浦測候所を象徴するのが、長さ100メートルのギャラリーです。夏至の日の朝、相模湾から昇る太陽の光が、このギャラリーをまっすぐ貫くように建てられています。海側の一面はガラス張りで、細長い空間の先端に立つと、まるで海の上に浮かんでいるような感覚を味わえます。
冬至の光を迎える「冬至光遥拝隧道」と「光学硝子舞台」
ギャラリーの下をくぐるように延びる、長さ約70メートルの鉄のトンネルが「冬至光遥拝隧道」です。こちらは冬至の日の朝日が、トンネルを通り抜ける向きに造られています。トンネルの先には、カメラのレンズと同じ光学ガラスで作られた「光学硝子舞台」があり、冬至の朝にはこの舞台も光に照らされます。舞台の向こうに広がる相模湾の青さは、晴れた日には息をのむほどの美しさです。
夏至や冬至の当日でなくても季節や時間帯によって表情が変わるので、何度訪れても新しい発見ができる場所です。
石舞台、茶室、竹林|歩くほどに出会う日本の美
敷地内には、能舞台の寸法をもとに計画された「石舞台」、千利休の国宝の茶室「待庵」を写した茶室「雨聴天」などが点在しています。鎌倉・明月院の山門として室町時代に建てられ、のちに東京の根津美術館の正門として使われていた「明月門」も、ここに移築されました。竹林のエリアもあり、敷地全体がひとつの大きな庭のような場所になっています。
見学は屋外が中心で、傾斜や段差、舗装されていない山道もあるため、歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。明月門の前には「Stone age Cafe」があり、甘橘山で栽培される柑橘を使ったフレッシュジュース「万事汁す」や季節のスイーツでひと休みできます。
江之浦測候所のチケット購入・発券について
見学前にCheck!
・日時指定の事前予約制・入替制(受付期限はクレジットカード払いは2日前、セブンイレブン払いは3日前まで)
・休館日は火曜・水曜、年末年始
・中学生未満は入館できない
・大きなスーツケースは持ち込めない
・施設や根府川駅の周辺にコンビニ・コインロッカーはない
江之浦測候所は、近代以前の人口密度を体感してもらうために入場人数を絞っているため、日時指定の事前予約制です。見学は午前の部(10:00〜13:00)と午後の部(13:30〜16:30)に分かれ、それぞれの時間内は自由に見て回れます。入館は各回の終了45分前までです。
チケットは公式サイトからオンラインで購入し、コンビニのセブン-イレブンで発券します。クレジットカード払いでもセブン–イレブン店頭にてチケットを発券する必要があるので注意しましょう。
施設と最寄りのJR根府川駅の周辺にはセブン-イレブンが無いので、小田原駅などで事前に発券しておきましょう。空きがあれば当日券もありますが、定員に達すると販売されません。
施設内には無料のロッカーがありますが、大きさは奥行40cm×幅50cm×高さ70cmまで。大きなスーツケースは持ち込めないため、小田原駅のコインロッカーに預けてから向かうと安心です。
江之浦測候所へのアクセス
江之浦測候所に行くには、小田原駅からJR東海道線で7分揺られてJR根府川駅へ。JR根府川駅から施設まで歩くと約40分かかるため、無料送迎バスを使いましょう。
江之浦リトリート 凛門に泊まれば、江之浦測候所の見学を旅の流れにゆったり組み込めます。宿から江之浦測候所までは車で数分。さらに、この宿のコンセプトも江之浦測候所のそれと通ずるところがあるため、より充実した旅となること間違いなし。
| 施設名 | 小田原文化財団 江之浦測候所 |
|---|---|
| 住所 | 神奈川県小田原市江之浦362-1 |
| 見学時間 | 午前の部 10:00〜13:00/午後の部 13:30〜16:30(各回の終了45分前までに入館) |
| 休館日 | 火曜・水曜、年末年始、臨時休館日 |
| 入館料 | オンライン事前購入 3,300円/当日券 3,850円 |
| アクセス | JR根府川駅から無料送迎バス(予約時に申し込み)/JR真鶴駅からタクシー約10分 |
| 注意 | 事前予約制・入替制。中学生未満は入館不可 |
| 公式サイト | 小田原文化財団 江之浦測候所 |
江之浦測候所とあわせて楽しみたい小田原の美食宿|江之浦リトリート 凛門

江之浦リトリート 凛門は、江之浦の柑橘畑に囲まれた高台に建つ、食にこだわったリトリートホテルです。
海景テラスからは相模湾の水平線が広がり、目線の下には柑橘の段々畑。客室にはあえてテレビを置いていないので、波の音や鳥の声を聞いてぼんやり景色を眺める――そんな何もしない贅沢な時間を過ごせます。
忙しい毎日を過ごす自分を癒し、本来の自分を取り戻すためや、頑張ってきた方をねぎらうため、あるいは大切な人との記念日を祝うためにおすすめです。
凛門の食事|地元の恵みを余すことなく使った身体にやさしい逸品料理

江之浦リトリート 凛門は、食事を楽しみに訪れる方も多いオーベルジュです。料理長の松本淳さんが、日本料理をベースに斬新なアイデアを加えたコースを手掛けます。相模湾の魚介、足柄牛、小田原の無農薬野菜など、この土地で育った食材を、皮や根まで余すことなく生かしているのも特徴。
実際にいただいてみると、一皿ひと皿がていねいで、見た目にも美しく、ボリュームもあります。それでいて胃にもたれないやさしさがありました。品数が多くても重く感じにくく、食べ終わったあとも心地よい満足感が残ります。ルフロで温まった身体に、じんわりしみこんでいくような味わいです。
テラスから見える「凛門ファーム」では、コンポストで作った肥料で柑橘を育てています。食材の無駄を出さない、自然の循環を大切にした取り組みも、この宿らしさのひとつです。
夕食


ある日の夕食は「守・破・離」をテーマに、相模湾の魚介盛りや伊勢海老、足柄牛のたたき、地栗ご飯などが並びます。
季節ごとに内容が変わるので、何度訪れても新しい出会いがあります。
アレルギーのある食材は、予約の段階で伝えておくと安心です。連泊の場合は2泊目以降の内容を相談できるので、2日目も違う夕食を楽しめます。
朝食

朝食は、白湯や黒文字デトックスウォーターから始まり、自家製のドレッシングを使った地野菜のサラダ、平飼い卵を使った卵料理、小田原の無農薬米「いのちの壱」、そして黒大豆味噌を使ったスープまで、身体をやさしく目覚めさせてくれる内容です。
日帰りでランチ利用もできる

ランチやアフタヌーンティーは、日帰りでも楽しめます。ルフロとセットでランチを楽しむもよし、まずはランチのみ、ルフロのみの利用もよし。いずれも事前予約必須です。
気になる方は、メールか電話で希望日を問い合わせてみてください。
クラフト温泉「ルフロ湯治」で体の芯まであたたまる

凛門のもう一つの魅力が「ルフロ湯治」。ルフロ湯治とは、天然温泉から30種類以上の良質な天然ミネラル成分を抽出したミストに包まれながら、国産の天然鉱石「薬石」が敷き詰められた空間で体の芯まであたたまる温浴のこと。
サウナ好きの方はもちろん、「最近疲れが溜まっていてリフレッシュしたい」という方や、「血行促進、代謝改善に興味がある」という方にはぜひ体験してほしい温浴です。魅力とおすすめの入り方を紹介します。
ルフロ湯治の魅力

天然温泉から特許技術で抽出した30種以上ものミネラル成分を含んだミストと、12種類の天然鉱石が放つ遠赤外線やラジウムの力により、室内でしばらく寝転がっていると身体中から汗が吹き出していきます。
ぼんやりと目を開けて空中を眺めていると、ミストに包まれてだんだんと天にものぼったような心地よい感覚に。
「サウナは暑すぎて息苦しい」という方や、「乾燥が気になってしまうため苦手」という方がいると思いますが、ルフロは違います。室内温度は40度ほどとサウナと比べてぐんと低いのにしっかり暑さは感じられ、ミストに包まれているので喉や肌、髪の乾燥は気になりません。
しばらく横になっていると、じわじわと汗がにじみ、気づけば全身がぽかぽかに。上がったあともその温かさが長く続き、スチームをたっぷり浴びた肌はしっとりして、なんだか美肌になったような気分になれます。身体の巡りがよくなったような、すっきりとした軽さも味わえました。
サウナに慣れていない方はもちろん、しっかりと汗をかきたいサウナ好きの方でも新鮮な温浴体験になるはず。
ルフロの入り方|休憩をはさみながら3セット・1時間が目安
ルフロの流れ
1. 地下1階のカウンターで、ルフロ着とタオルを受け取る
2. 浴場で髪も含めて全身を洗い、メイクも落とす
3. ルフロ着に着替え、水分をとる
4. ルフロで約10分横になる
5. 静養室で水分をとりながら約10分休む
ルフロに入る前は、まず浴場で髪の毛まで全身を洗い、メイクも落としておきます。ルフロ着を身に着けてルフロ室に向かいます。紙のショーツやブラも用意されているので、気になる方はスタッフに声をかけてみてください。
ルフロでは、最初にうつ伏せになってお腹を温めるのがおすすめとされています。ただ、姿勢は体調に合わせて無理のない楽な形で大丈夫。床に敷き詰められている薬石を触ったり、お腹に乗せてあたたかさを感じたりしてみるのもよいですよ。
10分ほど経ったら、静養室でひと休みしましょう。
ルフロ室の近くには、柑橘水やゴボウ茶などが置かれています。汗をたくさんかくので、入る前や休憩時にこまめに水分をとってください。

照明を落とした静養室は、ルフロで温まった身体を休める場所です。サウナでいうと外気浴や内気浴にあたる場所ですね。チェアに身を預けてぼんやり過ごしていると、身体のほてりがゆっくり落ち着いていきます。
しばらく休んでいると、またルフロ室に戻りたくなってくるのが不思議。再びルフロでミストに包まれて温浴し、静養室に戻ってくる…というサイクルを3セットするのがおすすめです。
凛門のお部屋



客室は4タイプ。最上階の「ビュースイート」は、弧を描く高い天井と大きな窓が印象的で、専用テラスから相模湾の水平線を眺められます。
ほかにも奥へ進むほど落ち着いた空気に包まれる「コーナークアッド」、リビングとベッドルームをぐるりと回遊できる「スーペリアツイン」、コンパクトな「スタンダードツイン(湯治ルーム)」があります。
どの部屋にも、風の出ない次世代型の冷暖房「パネルシェード」と睡眠科学にもとづいたマットレスがあり、ルフロを体験して心地よい疲れを感じた体をゆっくり休めるのに最適。
客室でゆっくりお風呂につかりたい方は、バスタブ付きのビュースイート・コーナークアッド・スーペリアツインがおすすめです。
江之浦測候所を巡り凛門で癒される1泊2日の過ごし方
小田原駅から車で約20分の江之浦測候所へ(事前予約必須)。杉本博司のアートの世界観をじっくり堪能します。

到着したら、まずは海景テラスへ。相模湾の水平線を眺めながらウェルカムドリンクを飲んでほっとひと息。

夕食前にルフロ湯治へ。休憩をはさみながら1時間ほどかけて、身体の芯までじっくり温まりましょう。

夕暮れどきのテラスは、昼間とは違った風合いに。空と海の色が少しずつ移り変わっていくのを眺める時間に癒されます。

地元の食材を余すことなく生かした夕食を、ダイニングでゆっくり味わいます。

室内にはいたるところに良質な睡眠へつながる仕掛けが。風の出ないエアコンやスリープサイエンスのマットレスのベッド、オーガニックコットン100%の肌あたりの良い館内着、そして周囲の静かな風と葉が揺れる音が、深い眠りへと導いてくれます。

朝食の前に、宿のまわりに広がる柑橘の段々畑を歩いてみましょう。都会とは違う、ゆったりとした時間の流れを感じられます。

小田原の摘みたての野菜を中心にした朝食で、一日を始めます。

出発の前に、もう一度ルフロへ。朝のルフロは、前日とはまた違ったすっきり感を味わえます。
館内では、かっさやアロマボディ、鍼灸などのトリートメントも利用できます。ルフロで温まったあとに受けると、よりいっそう心と身体がほどけて日ごろの疲れを解消できますよ。
江之浦リトリート 凛門の基本情報
江之浦リトリート 凛門に滞在できるのは1日3組。週末や連休、江之浦測候所の見学日に合わせて泊まりたい場合は、早めの予約がおすすめです。
| 施設名 | 江之浦リトリート 凛門(りもん) |
|---|---|
| 住所 | 神奈川県小田原市江之浦218-1 |
| 電話 | 0465-27-3711(受付10:00〜18:00、火曜定休) |
| チェックイン/アウト | 15:00/11:00 |
| 客室 | 全8室(1日3組の方が滞在できます) |
| 年齢 | 16歳以上の方が宿泊できます |
| 食事 | 朝食は宿泊料金に含む/夕食 24,200円(18:30〜、要事前予約) |
| 日帰りの食事 | ランチ 8,470円/アフタヌーンティー 4,840円(いずれも要予約) |
| アクセス | JR根府川駅から無料送迎で約7分(要予約) |
| 公式サイト | 江之浦リトリート 凛門 |
東京から小田原江之浦へのアクセス方法

東京から電車で約1時間
東京駅から東海道新幹線で小田原駅まで約33分、そしてJR東海道本線に乗り換えて根府川駅まで約7分です。
根府川駅は海を見下ろす小さな無人駅で、エレベーターやコインロッカー、駅前のタクシーはありません。大きな荷物がある場合は、宿の送迎を予約しておくと安心です。
箱根・富士山エリアとあわせた旅程に
小田原は、箱根や富士山へ向かう旅の玄関口です。江之浦リトリート 凛門から箱根湯本までは車で約20分、河口湖までも車で約1時間40分。河口湖や箱根で富士山の景色を楽しんだあと、最後の1泊を江之浦で過ごし、江之浦測候所を見てから東京へ戻る、という旅程も組めます。河口湖・山中湖の楽しみ方は、こちらの記事で紹介しています。

まとめ
江之浦測候所は、海と太陽の光、そして日本の建築と石の歴史が一体となった、ほかにはないアートの場です。美食と静かな滞在を楽しめる江之浦リトリート 凛門とあわせて訪れれば、時間を気にせず江之浦の魅力を心ゆくまで堪能できます。
相模湾と小田原の恵みを生かした料理、海を望むテラス、テレビのない静かな客室。アートと食を目的にした旅の1泊に、また富士山や箱根をめぐる旅の締めくくりに、江之浦リトリート 凛門を選んでみてはいかがでしょうか。大切な人と過ごす特別な時間が、きっと心に残る思い出になるはずです。












